最終更新日:2026/10/31 | ステータス:契約締結済・株式譲渡実行予定日(2026/10/21)経過、完了開示は未確認
※「試算」は筆者計算、「所感」は筆者分析。会社開示・報道で確認できない事項は「非開示」「未確認」と明記。
1. 案件サマリー
PEファンドのロングリーチグループが、2021年に非公開化したジャパンシステム(旧ジャスダック9758)と、2023年にボルトオンで取得したBlueship(持株会社JBホールディングス経由)をまとめて日本コムシス(コムシスホールディングス〈1721〉の子会社)へ売却する、PEから事業会社への戦略的エグジット案件。取得価額は非開示。
| 項目 |
内容 |
| 発表日 |
2026/09/30(日本コムシス・コムシスHD、ジャパンシステム/Blueship、ロングリーチが同日公表) |
| 買手 |
日本コムシス株式会社(コムシスホールディングス〈1721〉の子会社、非上場) |
| 対象会社 |
ジャパンシステム株式会社(東京都渋谷区)およびJBホールディングス株式会社(東京都千代田区、株式会社Blueshipの親会社) |
| 売主 |
ロングリーチグループ(保有ファンド・ビークルの名称は今回開示で非記載) |
| 取引形態 |
株式譲渡による全株式取得(完全子会社化)。PEファンドのエグジット |
| 取得価額 |
非開示(日本コムシス・ジャパンシステム・報道いずれも記載なし) |
| プレミアム |
―(非上場) |
| 契約締結日 |
2026/09/30 |
| 株式譲渡実行日 |
2026/10/21(予定、所定の条件充足が前提)。2026/10/31時点で完了開示は確認できず |
| 業種 |
情報・通信(SI、自治体向けパッケージ、ServiceNow関連) |
| タグ |
株式取得、非上場、PEファンド(エグジット)、戦略買収、ServiceNow、自治体DX |
2. 当事者概要
2.1 対象会社
| 項目 |
ジャパンシステム |
JBホールディングス |
Blueship |
| 所在地 |
東京都渋谷区代々木1-22-1 |
東京都千代田区麹町1-12-1(ロングリーチと同住所) |
東京都渋谷区代々木1-22-1 |
| 代表者 |
代表執行役社長 松野克哉 |
代表取締役 津田敬太郎 |
代表執行役会長 松野克哉 |
| 設立 |
2020/07/15(創立1969/06) |
2023/03/09 |
2004/03/18 |
| 資本金 |
1億円 |
1億円 |
3,000万円 |
| 事業 |
DX・ITコンサル、AI導入・アプリ開発、クラウド・BI、自社パッケージ(自治体向け財務会計「FAST」等)、SI、インフラ構築。公共・自治体・金融が中心 |
Blueship株式の保有(持株会社) |
サービストランジション、ServiceNow等によるデジタルワークフロー構築、DX導入支援 |
- ジャパンシステムの設立日が2020/7/15となっているのは、非公開化に用いたビークルとの合併等による法人格の変更と推察(未確認)。
- 沿革:1969年に東京ソフトウェアサービスとして創業、1988年店頭(後のジャスダック)上場。1990年代以降は米企業傘下で、2017年以降DXC Technologyが最終親会社(M&A Online 2020/12/24)。
- 2023/4/11、ロングリーチがBlueshipをジャパンシステムのボルトオン投資として取得する契約を公表。2023/9/29、ジャパンシステムとBlueshipがServiceNow Venturesから戦略投資を受け入れ(ロングリーチ発表、「日本企業初」と表記)。2025年にServiceNow Partner Awards受賞。
- 2026/4/1、松野克哉氏(2025/10ジャパンシステム社長就任)がBlueship代表執行役会長CEOを兼任、金井雅貴氏が同社長COOに就任し、両社一体運営を強化。
- 業績:非公開化後の業績(売上・利益・純資産)はいずれも非開示。参考として、2020年TOB時の事業計画(会社作成)は以下。
| 項目(百万円、連結) |
2020/12期(10-12月の3ヶ月) |
2021/12期(計画) |
2022/12期(計画) |
| 売上高 |
2,186 |
11,241 |
12,976 |
| 営業利益 |
110 |
1,000 |
1,223 |
| EBITDA |
174 |
1,261 |
1,484 |
| FCF |
166 |
684 |
839 |
出典:ジャパンシステム意見表明(2020/12/24)。2021/12期計画は営業利益前期比+56.5%、EBITDA同+40.8%とされており、逆算すると2020/12期通期見込は営業利益約6.4億円、EBITDA約9.0億円(試算)。
2.2 買手
- 日本コムシス:本社 東京都品川区、代表取締役社長 田辺博。コムシスホールディングス(1721)の中核子会社で、通信キャリア向け設備工事を基盤にITソリューション・社会システム関連事業を拡大中。
- コムシスグループは中期経営計画「コムシスグループ2030ビジョン」(2025/5公表)で、ITソリューション事業・社会システム関連事業の強化を成長戦略の柱の一つに掲げる。
- 対象会社との資本関係・取引関係:開示なし。
3. 取引スキーム
- Step1:2026/9/30、日本コムシスとロングリーチ(グループ)が株式譲渡契約を締結。
- Step2:2026/10/21(予定)、ロングリーチが保有するジャパンシステム全株式およびJBホールディングス全株式を日本コムシスへ譲渡。これによりBlueshipは日本コムシスの孫会社となる。
- ストラクチャー(譲渡後):コムシスHD → 日本コムシス → ジャパンシステム/JBホールディングス → Blueship。
- ServiceNow Venturesの出資(2023年)が対象会社のどの階層に、どの比率で残っているか(今回の「全株式」取得との関係)は開示なし(未確認)。
- コムシスHDによるTDnet適時開示は確認できず(TDnet一覧〈1721〉に該当なし)。子会社による取得で適時開示基準に満たない規模と推察(所感)。
4. 取得価額・バリュエーション
- 取得価額、対象会社の直近業績・純資産、のれん見込額、業績への影響はいずれも非開示。このためEV/EBITDA等の倍率は算出不可。
- 参考:2020年非公開化時の価格(エントリー)は下表(試算)。
| 項目 |
値 |
備考 |
| TOB価格 |
590円 |
前日終値409円比+44.25%、1M平均448円比+31.70%、3M平均507円比+16.37%、6M平均484円比+21.90% |
| TOB買付代金(最大) |
約71.2億円 |
590円×12,063,005株(DXC US以外の全株) |
| DXC USからの自己株式取得 |
69.865億円 |
500円×13,973,000株(対価総額6,986,500,000円) |
| 株式取得総額(試算) |
約141億円 |
上記合計(最大値ベース、取引費用除く) |
| TOB価格ベースの株式価値(試算) |
約153.6億円 |
590円×26,036,005株 |
| 株式取得総額/2021/12期計画EBITDA(試算) |
約11.2倍 |
141億÷12.61億。純有利子負債(ネットキャッシュ)未調整のためEV/EBITDAではない |
5. 株式価値算定(2020年TOB時、参考)
- 対象会社側算定機関 みずほ証券:市場株価基準法409〜507円、類似企業比較法(EV/EBITDA)388〜602円、DCF法526〜847円(割引率5.75〜7.75%、永久成長率−1.00〜1.00%)。フェアネス・オピニオンは取得せず。
- 特別委員会はStand by Cから算定書を取得。590円は同DCF法レンジ内。
- 公開買付者(JSLホールディングス合同会社)は第三者算定書を取得せず。
- 当時、川田朋博社長(当時)らが615円(DXC株は510円)のMBO再提案を提示したが、DXCが支持せず、ジャパンシステムは賛同・応募中立の意見を表明。
- 今回(2026年)の売却について、算定機関・手法・フェアネス・オピニオン等は非開示(非上場同士の相対取引)。
6. 交渉経緯・タイムライン
| 日付 |
内容 |
| 2019/01 |
DXCが保有株式の一部譲渡・非公開化を複数企業に打診(全株取得を提案したのはロングリーチのみ) |
| 2019/04/16 |
ロングリーチがDXCに初期的意向表明書 |
| 2020/10/19 |
DXC株の自己株式取得価格500円で合意(ロングリーチ→対象会社へ提案) |
| 2020/12/24 |
JSLホールディングスによるTOB(590円)公表、対象会社は賛同・応募中立 |
| 2021/02/15 |
TOB期間満了(成立) |
| 2021/04 |
株式併合によるスクイーズアウト、上場廃止(M&A Online DBでは2021/4/26) |
| 2023/04/11 |
ロングリーチ、Blueshipをジャパンシステムのボルトオンとして取得する契約を公表 |
| 2023/09/29 |
ServiceNow Venturesが両社に戦略投資 |
| 2026/09/30 |
日本コムシスへの全株式譲渡契約締結・公表 |
| 2026/10/21 |
株式譲渡実行予定日(完了開示は未確認) |
7. 公正性担保措置
- 今回は非上場会社の相対取引で、少数株主は存在しない(ServiceNow Venturesの持分の扱いは未確認)。特別委員会等の措置は該当なし。
- 2020年TOBでは特別委員会設置、独立算定機関2社(みずほ証券=成功報酬含む、Stand by C)、利害関係取締役の除外を実施。MoMは設定せず(下限は所有割合13%=議決権2/3確保水準)。
8. シナジー・ディスシナジー
8.1 期待シナジー(開示ベース)
- コムシスグループのITインフラ構築力・システム開発力と、対象会社グループのシステム開発力・ソリューション提供力を組み合わせ、より付加価値の高いサービスを提供(日本コムシス)。
- 公共・自治体・金融の顧客基盤、自治体向け財務会計「FAST」等の自社パッケージ、ServiceNowパートナーとしてのケイパビリティの獲得。
- 事業内容・顧客との契約・サービス提供体制は現時点で変更予定なし(ジャパンシステム)。
8.2 デメリット・リスク(所感)
- のれん:取得価額非開示のため規模不明。PE保有中のレバレッジ(買収ローン)の承継・返済の有無も不明。
- キーパーソン依存:2025年以降に経営陣が刷新されたばかり(松野氏・金井氏)で、PE期間のインセンティブ終了後のリテンションが課題。2020年時も事業本部長層の離職リスクが議論された経緯がある。
- ServiceNowパートナー事業は人材獲得競争が激しく、エンジニアの定着が価値の前提。
- 自治体システム標準化(ガバメントクラウド移行)の進展が自治体向けパッケージ事業に与える影響。
9. 資金調達・取引総額
- 取得資金・取引総額ともに非開示。コムシスHDの規模からは自己資金での取得と推察されるが未確認。
- 参考:2020年のTOB資金はロングリーチ系ファンドからの出資および三菱UFJ銀行からの借入れ。自己株式取得資金は第三者割当増資・減資等で確保。
10. 少数株主への影響
- 該当なし(非上場同士の取引)。旧少数株主は2021年のスクイーズアウト時に590円相当の金銭を受領済み。
11. スケジュール
| 日付 |
事項 |
| 2026/09/30 |
株式譲渡契約締結・公表 |
| 2026/10/21 |
株式譲渡実行(予定) |
| 2026年11月上旬(見込) |
コムシスHD 2027/3期中間決算(連結範囲・のれん等の言及の有無を確認) |
12. 所感・論点(筆者分析)
- PEエグジットの形:「非公開化(2021)→ボルトオン(2023 Blueship)→戦略的パートナー出資(2023 ServiceNow Ventures)→事業会社への売却(2026)」という典型的なバリューアップ・シナリオ。保有期間は約5年半(TOB決済2021/2〜譲渡予定2026/10)。
- エントリーは株式取得総額約141億円(試算、TOB最大ベース+DXC自己株式取得)。DXC株500円・一般株主590円の二段階価格で、親会社DXCに低い価格を受け入れさせた点が特徴。売却価格が非開示のためIRR・MOICは算出不可。
- 2020年時のDCFレンジ上限847円はTOB価格の約1.4倍で、当時の事業計画(2022/12期EBITDA 14.8億円)が達成されていればアップサイドの余地があった(所感)。ただし計画の達成度は非開示。
- 買手側:通信建設中心のコムシスにとって、IT・公共DX領域のポートフォリオ拡大。NTT系インフラ構築とアプリ・ServiceNow層の上下補完。
- 開示の薄さ:上場親会社のTDnet開示がなく、価格・業績・のれんが一切不明。データベースとしては「非開示案件」の扱い。
13. 未確認事項
- 株式譲渡の実行(2026/10/21予定)の完了。日本コムシス・コムシスHD・ジャパンシステム・ロングリーチのいずれも10/31時点で完了開示を確認できず。
- 取得価額、対象会社の直近業績(売上・営業利益・EBITDA)・純資産・有利子負債、のれん、業績への影響。
- ロングリーチのエグジット・プレスリリース本文(サイト上は見出しのみ取得可)。
- ServiceNow Venturesの持分の有無・比率と、今回の取引での扱い。
- Blueship取得価額(2023年)、JBホールディングスの株主構成(経営陣持分の有無)。
- アドバイザー(FA・法務)。
- 2021年TOBの応募結果(応募株数)。
14. 出典
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