【TOB(非公開化)】NSSK-EPSILON1(日本産業推進機構)によるブロードメディア(4347)の非公開化(2026/10/29発表)

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最終更新日:2026/11/02 | ステータス:TOB実施中(2026/10/30〜12/14、30営業日)。成立は未確定
※「試算」は筆者計算、「所感」は筆者分析。会社開示・報道で確認できない事項は「非開示」「未確認」と明記。

1. 案件サマリー

一言で:日本産業推進機構(NSSK)のファンドが、株式会社NSSK-EPSILON1を通じて、ブロードメディア(東証スタンダード)を1株2,500円のTOBで非公開化する。ブロードメディアは通信制高校「ルネサンス高校」などの教育事業と、Akamaiの国内正規代理店(CDN・セキュリティ)を中心とする技術事業を持つ。前営業日(10/28)終値1,975円比のプレミアムは+26.58%。筆頭株主のアクティビストAVI(40.00%)が応募に合意済み。会社主導の入札(15社打診→3社→最終2社)でNSSKが選ばれた後、AVIとの交渉で価格は2,470円から2,500円に上がった。

項目 内容
発表日 2026年10月29日(木)
対象会社 ブロードメディア株式会社(東証スタンダード 4347)
買付者 株式会社NSSK-EPSILON1(親会社NSSK-EPSILON2を通じて、日本産業推進機構が運営・助言するファンドが保有)
スキーム TOB → 株式売渡請求または株式併合によるスクイーズアウト(LBO:三井住友銀行・みずほ銀行の買収ローン+親会社出資)
価格 普通株式 2,500円(新株予約権の発行なし)
プレミアム 10/28終値1,975円比 +26.58%、1ヶ月平均1,896円比 +31.86%、3ヶ月平均1,777円比 +40.69%、6ヶ月平均1,801円比 +38.81%
取引規模 株式価値 約178.2億円(2,500円×本基準株式数7,127,029株、試算)。EV 約143.1億円(試算)
下限/上限 下限4,718,100株(所有割合66.20%)。上限なし
ステータス TOB期間中(12/14満了予定、決済12/21)
業種 情報・通信/教育(通信制高校・日本語教育・AI教育)+IT(Akamai CDN・セキュリティ代理店、SI)
タグ TOB、非公開化、PEファンド、日本産業推進機構、NSSK、LBO、応募契約、AVI、アクティビスト売却、MoMあり、入札(複数候補)、スタンダード市場、教育、通信制高校、Akamai、CDN、セキュリティ、クラウドゲーム

2. 当事者概要

2.1 対象会社:ブロードメディア

  • 代表取締役社長 橋本太郎。本社は東京都港区赤坂。1996年9月にスカイインターナショナル企画として設立し、デジタルクラブ、クラビット(2002/1)を経て、2002年3月にナスダック・ジャパンに上場。2007年10月に現商号へ変更。
  • 事業ポートフォリオを入れ替え続けている。2024/11〜12にメディアコンテンツ(クランクイン!等)を譲渡、2026/3/31に釣りビジョン(51.6%)をサイバーエージェントに譲渡して放送セグメントを終了(譲渡価額は非開示。個別決算で約270百万円の特別利益)。同日に持分法適用会社ガラポンも売却。2026/4にスタジオ事業を分社化し、2026/7にはeスポーツチーム「CAG OSAKA」の一部チームを譲渡した(事業譲渡益55百万円)。
  • 2027/3期の報告セグメントは4つ。
    • 教育:広域通信制高校「ルネサンス高等学校グループ」(大子・豊田・大阪)、「ルネサンス日本語学院」(日本語教師養成・外国人向け研修)、div(テックキャンプ。AI・プログラミング教育、IT転職支援)。
    • 技術:Akamaiの国内正規代理店(CDN・WAF等のサイバーセキュリティ)が主力。ほかに、クラウドソリューション(子会社Oy Gamecluster Ltd.による通信事業者・IPTV事業者向けのクラウドゲーム配信技術、3DCG配信「G-cluster XR」)、デジタルシネマ(映画館向けDCP配信・上映システム)、ホテル向けネットワーク、DX・システム開発(システムデザイン開発、divx)、Aryaka・Vue.ai等。
    • スタジオ・プロダクション:海外映画・ドラマの日本語字幕・吹替、バリアフリー字幕・音声解説。
    • その他:ポケット(Nintendo Switch・VR向けゲームの企画・販売)。
  • クラウドゲームについて:自社運営の消費者向けクラウドゲームサービス「Gクラスタ」は2025年2月に終了した。現在は技術セグメント内で、Oy Gamecluster経由の法人向け配信技術の提供として残っている(2025/3期・2026/3期決算短信、2027/3期第1四半期決算短信)。売上規模は非開示で、今回の意見表明では言及されていない。
  • 2027/3期中間期の外部売上6,974百万円の内訳は、Akamaiサービス2,510百万円(36%、前年同期比+18.6%)、教育2,718百万円、スタジオ875百万円、技術(Akamai以外)747百万円、その他123百万円。Akamaiは「独自商製品以外のストック収益」に分類され、他社の商材の再販である点に留意。
  • 2024年度からの当面の目標は、連結営業利益率10%・ROE30%。連結子会社は8社。
連結業績(百万円) 2024/3期 2025/3期 2026/3期 2027/3期 中間期 2027/3期 予想
売上高 14,179 15,533 15,794 6,973(前年同期7,551) 14,500
営業利益 869 707 1,063 405(前年同期358) 1,100
営業利益率 6.1% 4.6% 6.7% 5.8% 7.6%
親会社株主に帰属する当期純利益 680 335 782 371(前年同期268) 890
EPS(円) 93.50 46.86 109.74 52.17 124.88
BPS(円) 656.25 649.95 710.27 702.33(試算) —

2027/3期の会社予想(2026/5/12公表)は10/29の中間期短信で据え置き。売上の減少は放送事業(2026/3期 売上2,244百万円・営業利益115百万円)がなくなったため。2026/9末の財政状態は、総資産10,607百万円、純資産5,006百万円、自己資本比率47.2%、現金及び預金4,389百万円、借入金751百万円(短期541・長期210)。現金には、通信制高校の就学支援金に係る預り金1,992百万円(3月末は283百万円)が含まれる点に注意(後述の4.1)。

セグメント(百万円) 2026/3期 売上 2026/3期 営業利益 2027/3期中間 売上 2027/3期中間 営業利益
教育 5,507 967 2,738 425
技術 6,578 906 3,415 407
スタジオ・プロダクション 1,614 28 876 42
放送(2026/3末で終了) 2,244 115 — —
その他 246 △53 125 △16
調整額(本社費等) △394 △900 △180 △453

2.2 買付者

  • 株式会社NSSK-EPSILON1(東京都港区愛宕2-5-1、代表取締役 秋山翔平、資本金5万円、2026/8/26設立)。全株式を株式会社NSSK-EPSILON2(同日設立)が保有し、その全株式を、NSSKグループが管理またはサービスを提供する投資ファンド(NSSKファンド)が保有する。
  • 日本産業推進機構(NSSK)は2014年12月設立の独立系PE。累計47社に投資している。教育分野では、ウィザス(第一学院高等学校。2025/7投資・非公開化)、WEWORLD、ミライフ、EdulinXなどに投資している。
  • 公開買付者グループは対象会社の株式を保有していない。NSSK側のアドバイザー(いずれも2026/7中旬に選任)は、長島・大野・常松法律事務所(リーガル)、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー(財務)、大和証券(公開買付代理人)。

2.3 応募契約:AVI(2,851,053株・40.00%)

応募予定株主 株数 所有割合 備考
AVI Japan Opportunity Trust Plc、AVI Japanese Special Situations Fund、その他1投資法人(運用はAsset Value Investors Limited) 2,851,053 40.00% 筆頭株主・主要株主。株数はAVIから公開買付者への直接報告による
  • AVIは2024/11に筆頭株主(11.00%)になり、2025/7/31に「合計40%まで」の部分TOBを会社に提案した。AVI Japanは2025/12/10〜2026/1/28に1株2,200円・上限775,300株(10.88%)の部分TOBを実施した(会社は中立)。応募は1,749,691株と上限を大きく上回り、あん分比例で上限まで取得した。今回のTOBはこの部分TOBとは「何ら関係するものではない」とされている。
  • それ以前は、ダルトン系のNAVFが2024/11に一時筆頭株主になり、2025/4に主要株主から外れている。
  • 応募の前提条件はTOBの開始のみ。対価はTOB価格だけで、ほかの利益供与はない(下記3.3)。

3. 取引スキーム

  1. NSSK-EPSILON1がTOBを実施(2026/10/30〜12/14、30営業日、決済開始12/21)。
  2. TOB成立後、90%以上を取得すれば株式売渡請求を行い、届かなければ株式併合を行う。株式併合の臨時株主総会は2027年2月下旬に開催する予定。
  3. 上場廃止。決済後は公開買付者が取締役の過半数を指名する予定。

3.1 下限の設計

下限4,718,100株=本基準株式数7,127,029株(2026/9末の発行済7,500,000株−自己株式372,971株)の議決権71,270個×2/3=47,514個から、取締役の譲渡制限付株式(RS)33,300株分の333個を控除した47,181個×100株。RSを持つ取締役(全員が賛同)は株式併合に賛成する見込みのため、RS分を控除して特別決議に必要な水準に合わせている。AVI分(40.00%)を除くと、ほかの株主から1,867,047株(26.20%)の応募が必要。これはAVI以外の株式4,275,976株の約43.7%にあたる(試算)。

3.2 スキーム選択の理由

会社は上場維持と非公開化のどちらも排除しない入札を行った。第一次意向表明の3社はいずれも非公開化を前提とした提案だった。非公開化の理由として、教育・技術への成長投資を短期業績にとらわれずに機動的に行うことと、上場維持コストの削減を挙げている。

3.3 契約の主要条項

  • 応募契約(AVI):入札参加者を除く第三者が、TOB価格を4%以上上回る上限なしの非公開化TOB(適格対抗TOB)を開始した場合、または資金証明と許認可の見通しが確かな法的拘束力のある提案を行った場合、AVIは価格変更の協議を申し入れられる。公開買付者が5営業日以内(または期間満了前営業日のいずれか早い日)に同額以上に引き上げなければ、AVIは応募しない、または応募を解除して対抗TOBに応募できる。AVIは決済まで株主提案権等を行使せず、競合する取引の勧誘も行わない。
  • 公開買付契約(会社):会社は賛同を維持し、競合取引の勧誘・情報提供を禁止される(ノーショップ)。ただし入札参加者を除く第三者が、期間満了の7営業日前までに上回る価格の適格対抗TOBを開始した場合、または対抗提案を公表した場合で、公開買付者が5営業日以内に同額以上に引き上げず、賛同を維持すると善管注意義務違反の具体的なおそれがあるときは、賛同を撤回できる(フィデューシャリー・アウト)。表明保証違反は買付者の表明保証保険で手当てし、悪意の場合を除き会社への補償請求はできない。公開買付者は従業員の雇用と処遇の維持に努める。
  • 入札参加者(プロセスレターの受領者を含む)は、どちらの契約でも対抗者として扱われない。入札で負けた側が後から対抗TOBを仕掛けても、契約上の離脱事由にはならない。

3.4 RS等

新株予約権はない。取締役のRS(取締役分33,300株)は譲渡制限があるためTOBに応募できない。決済後、会社が無償で取得する合意を求める予定で、その代わりに同等の経済的利益を与えるインセンティブ・プランまたは退職慰労金制度を整える。

4. 価格・プレミアム分析

基準(10/28=公表日の前営業日) 株価(円) プレミアム 類似事例の中央値(276件) 差(試算)
終値 1,975 +26.58% 28.6% △2.0pt
1ヶ月平均 1,896 +31.86% 32.0% △0.1pt
3ヶ月平均 1,777 +40.69% 36.6% +4.1pt
6ヶ月平均 1,801 +38.81% 38.6% +0.2pt

比較対象は、GIPが選んだ非公開化目的の他社株TOB 276件(2019/6/28以降に公表、不成立は除外、TOB期間中の事例を含む)。会社は「前日・1ヶ月は中央値をやや下回るが、3ヶ月・6ヶ月は上回り、遜色ない」と評価している。価格はAVIの部分TOB価格2,200円を+13.6%、2026/3末BPSを約3.5倍上回る(試算)。

4.1 バリュエーション指標(試算)

指標 数値(試算)
株式価値(2,500円×7,127,029株) 17,817.6百万円
EV(+借入金750.8+リース債務129.0−現金及び預金4,388.7、非支配株主持分0) 14,308.7百万円
EV/EBITDA(LTM:営業利益1,110.5+D&A140.4=1,251.0) 11.4倍
EV/EBITDA(2027/3期:会社予想営業利益1,100+2026/3期D&A159.6) 11.4倍
(参考)EV/EBITDA(2027/3期:中間実績465+事業計画下期EBITDA1,019=1,484) 9.6倍
(参考)EV/EBITDA(2028/3期:事業計画EBITDA1,843) 7.8倍
(参考)預り金1,992百万円を現金から除いた場合のEV/EBITDA(LTM) 13.0倍
PER(2026/3期EPS 109.74円) 22.8倍
PER(2027/3期予想EPS 124.88円) 20.0倍
PBR(2026/9末BPS 702.33円) 3.56倍
  • BSは2026/9/30時点。リース債務は中間期BSで区分表示されていないため、2026/3末(流動40.8+固定88.2)で代用した。
  • LTMの営業利益とD&Aには、2026/3期下期の放送事業(売却済み)が含まれる。2026/3期の放送のD&Aは50.1百万円で、これを除くと2027/3期のEBITDAは1,209.5百万円、EV/EBITDAは11.8倍になる。
  • 就学支援金の預り金は、中間期末に一時的に積み上がる性質のもの(3月末は283百万円)。これを除いた「実質ネットキャッシュ」を基準にすると、EV倍率は約1.5倍高くなる。

5. 株式価値算定(GIP、対象会社依頼、10/28付、FOなし)

手法 レンジ(円) 2,500円の位置
市場株価平均法(10/28基準) 1,777〜1,975 上限を上回る
類似会社比較法(SOTP、EV/EBITDA) 1,209〜1,598 上限を上回る
DCF法(SOTP) 2,480〜3,012 レンジ内の下限寄り(下限+20円)
  • 類似会社は、教育がナガセ、インソース、ステップ、早稲田アカデミー、リソー教育、学究社、スプリックス、明光ネットワークジャパン。技術がテクマトリックス、アセンテック、サーバーワークス、Jストリーム、アズジェント。
  • DCFは事業別に算定して合算(SOTP)。WACCは教育8.1〜9.1%、技術10.5〜11.5%(サイズ・プレミアム2.8%を含む)。永久成長率は0〜1%。継続価値は、教育7,329〜9,841百万円、技術4,353〜5,514百万円、スタジオ△48〜△38百万円、その他47〜60百万円。本社費は売上高の比率で各事業に配分。余剰現預金と繰越欠損金の節税効果も考慮している。
  • 事業計画(百万円):2027/3期(下期6ヶ月)は売上7,952・営業利益882・EBITDA1,019・FCF1,314。以降は2028/3期16,584・1,563・1,843・1,026、2029/3期18,325・1,965・2,253・1,473、2030/3期19,563・2,104・2,384・1,644、2031/3期21,000・2,240・2,518・1,739。前提は通信制高校の生徒数増とAkamai代理店の顧客数増。シナジーは織り込んでいない。
  • 2027/3期の上期実績405百万円に計画の下期882百万円を足すと、営業利益は約1,288百万円。会社予想1,100百万円を約17%上回る(試算)。計画は予想より強気だが、予想は据え置かれている。
  • GIPの報酬には成功報酬が含まれる。公開買付者は算定書・FOを取得していない。

6. 交渉経緯・タイムライン

日付 出来事
2024/11/19 AVIが筆頭株主に(11.00%)
2025/5/20 戦略検討委員会(社外取締役で構成)の設置を決議
2025/7/31 AVIから、合計40%を上限とする部分TOB(2,200円)の提案を受領
2025/12/10 AVI JapanのTOB開始(〜2026/1/28、2,200円、上限775,300株)。会社は中立
2026/1/29 AVIのTOB結果:応募1,749,691株、あん分比例で775,300株を取得。AVIは合計40%に
2026/3/31 釣りビジョンをサイバーエージェントに譲渡。放送事業を終了
2026/3下旬 上場維持・非公開化を問わない入札の検討を開始。GIPをFA・算定機関に選任
2026/4下旬 西村あさひをリーガルに選任
2026/4/28 特別委員会を設置
2026/6上旬 事業会社・投資ファンド15社で第一次入札を開始
2026/7/3 3社から第一次意向表明。NSSKは2,250〜2,300円(7/2終値1,806円比+24.58〜27.35%、中間・期末とも無配が前提)
2026/7/16 3社を第二次入札に選定。DD(NSSKは7下旬〜9上旬)
2026/9/4 2社から法的拘束力のある提案(1社は辞退)。NSSKは2,450円(9/3終値1,635円比+49.85%)
2026/9/11 NSSKが修正版を提出(資金調達に関する記載を更新)
2026/9/18 NSSKを選定(価格が最高、コミットメントレター取得済み、経営方針等)
2026/9/19 特別委員会が価格の再検討を要請
2026/9/25 2,465円(9/24終値1,899円比+29.81%)
2026/9/26 特別委員会が再度要請
2026/9/30 2,470円(9/29終値1,898円比+30.14%)
2026/10/1 会社・特別委員会が2,470円に応諾
2026/10/7 NSSKとAVIが応募契約の交渉を開始。AVIは2,550円を要求
2026/10/13 NSSKが2,480円を提示
2026/10/16 AVIが2,510円を要求
2026/10/19 NSSKが2,500円を提示
2026/10/21 AVIが2,500円に応諾(10/23にその他の条件も合意)
2026/10/26 NSSKが会社に2,500円を伝達
2026/10/28 特別委員会が答申(全員一致)。GIP算定書
2026/10/29 取締役会が全員一致(10名)で賛同・応募推奨を決議。応募契約・公開買付契約を締結し公表。同日に中間期決算と期末無配への修正を公表

第一次意向表明の上限2,300円から+200円(+8.7%)、第二次の2,450円から+50円(+2.0%)の引上げ。うち特別委員会による引上げが+20円、AVIによる引上げが+30円(試算)。

7. 公正性担保措置

  • 特別委員会:2026/4/28に設置。戦略検討委員会の委員でもある独立社外取締役、山口畝誉氏(委員長)、山田純氏、粂川操氏(監査等委員・公認会計士)の3名。報酬は固定額。委員会独自のアドバイザーは選任せず、会社のGIP・西村あさひを5/20に承認した。19回開催(5/20〜10/28)、答申は全員一致。NSSKに2度、価格の再検討を要請した。
  • 独立アドバイザー:GIP(FA・算定。成功報酬あり)、西村あさひ(時間報酬のみ)。
  • 取締役会:10名(うち独立社外取締役6名)の全員一致。MBOでも支配株主による取引でもなく、特別利害関係を持つ取締役はいない。AVIや候補先に在籍していない役職員4名で事務局を構成した。
  • マーケットチェック:15社に打診する積極的な入札を行った。TOB期間は30営業日。取引保護条項はあるが、入札参加者以外による対抗提案には応じられる。
  • MoM:下限66.20%は、MoM(利害関係のない株主の過半数)である3,563,515株(50.00%)を上回る。AVIは公開買付者と利害関係のない独立した株主と整理しており、AVI分を含めてMoMを満たす設計。
  • 強圧性の排除:上限なし、スクイーズアウトの対価はTOB価格と同額、株式買取請求・価格決定申立ての機会あり。

8. シナジー・ディスシナジー

8.1 期待シナジー(開示ベース)

  • 通信制高校:NSSKの投資先ウィザス(第一学院高等学校)とのノウハウの共有や生徒募集での連携。
  • 日本語教育:投資先WEWORLD等との連携により、外国人材の教育・紹介へ展開。
  • Akamai代理店:NSSKが持つ地域金融機関とのネットワークを使い、地方企業のセキュリティ需要を開拓。
  • 経営管理・人材・M&Aの支援。成長投資を短期業績にとらわれずに行えること。

8.2 デメリットと会社判断

  • 上場廃止で、エクイティ・ファイナンスと、上場会社としての知名度・社会的信用を失う。会社は、自己資金と借入で資金を確保でき、当面エクイティ調達の必要性は高くないこと、知名度・信用は誠実な事業遂行で維持できることから、デメリットは限定的と判断した。
  • LBOの負債負担については、意見表明に具体的な評価がない(借入額は届出書で要確認)。
  • 従業員の雇用は基本的に維持し、常勤取締役は続投する予定。

9. 資金調達・取引総額

  • 資金源:三井住友銀行・みずほ銀行の買収ローン(決済開始日の前営業日までに実行予定)と、親会社NSSK-EPSILON2の出資(上限10,180百万円)。借入額は意見表明では非開示。
  • 取引総額:2,500円×7,127,029株=17,817.6百万円(試算)。うちAVI分は7,127.6百万円(試算)。
  • 出資上限10,180百万円が全額使われる場合、買収ローンは約76億円以上となる計算(試算、手数料等を除く)。これに対し、LTM EBITDAは約12.5億円。

10. 少数株主への影響

  • 配当:2027/3期の期末配当予想65円を無配に修正(TOB成立が条件)。中間配当もない。2026/3期の実績は年60円(増配後)。TOB価格は期末無配を前提に決められている。
  • スクイーズアウトの対価はTOB価格2,500円と同額になる予定。
  • AVIの部分TOB(2,200円)であん分比例により売り切れなかった株主にとっては、+300円で全株を売却できる機会になる。
  • 上場廃止:東証スタンダードの上場廃止基準に該当する見込み。

11. スケジュール

項目 日程
公表 2026/10/29
TOB期間 2026/10/30〜12/14(30営業日)
半期報告書提出 2026/11/13(予定)
結果公表 2026/12/15(予定)
決済開始日 2026/12/21(予定)
臨時株主総会(株式併合の場合) 2027年2月下旬(予定)
上場廃止 スクイーズアウト手続後(日程未定)

12. 所感・論点(筆者分析)

以下は開示内容ではなく筆者の見解。

  • アクティビストが作った売却:AVIは筆頭株主になってから2年弱で40%まで買い増した。会社は戦略検討委員会を設け、放送・メディア事業を売却し、最後に会社自体の売却入札に至った。40%の株主が売却を望めば、上場維持の選択肢は実質的にない。今回はその帰結といえる。
  • 入札後にAVIが価格を上げた:特別委員会の交渉は2,450円から2,470円(+20円)にとどまった。その後、応募契約の交渉でAVIが+30円を引き出した。公表時の前日比プレミアム(26.58%)は類似事例の中央値を下回る。入札で価格が出た後、最後に価格を決めたのは40%を持つ株主の交渉力だった。
  • DCFの下限ぎりぎり:2,500円はDCF(2,480〜3,012円)の下限から+20円。計画はFY31に営業利益2,240百万円(FY26の約2倍)を見込んでおり、価格はこの計画をほとんど評価していない。一方、類似会社比較法(上限1,598円)は大きく上回る。市場が評価するのは「教育+代理店」のコングロマリット・ディスカウントがかかった現在の姿で、DCFは事業別の成長を見ている。そのギャップの大半は買い手のものになる構図。
  • EV/EBITDA 11倍台の中身:現金の約45%は就学支援金の預り金が一時的に膨らんだもので、これを除くとLTMで約13倍。教育(ストック型、規制業種)とAkamai代理店(成長しているが他社商材の再販)の組み合わせとしては中位の水準。代理店契約が継続するかがDDの肝だったとみられる。
  • 「クラウドゲーム/CDN企業」ではなく「教育+セキュリティ代理店」:Gクラスタ(消費者向けクラウドゲーム)は2025/2に終了し、現在は法人向けの配信技術が残るのみ。DCFの継続価値の大部分は教育(約6割)と技術(約4割)で、ゲーム・スタジオはほぼゼロ。買い手が教育特化のNSSK(ウィザスに次ぐ通信制高校の取得)である点も、本件の本質が教育ロールアップであることを示している。技術事業は将来の切り出し・売却の候補になり得る(所感)。
  • 成立の確度:AVI以外の株主の約44%の応募が必要。AVIの部分TOBで約175万株(24.5%)が2,200円で売り手として現れた実績からみて、2,500円での充足は十分にあり得る。入札参加者を対抗者から除く契約設計により、敗れた候補が対抗TOBを仕掛ける余地は小さい。

13. 未確認事項

  • 公開買付届出書(2026/10/30提出、EDINET)の本文:買収ローンの金額・条件、買付代金の正確な額、NSSKファンドの名称・出資者構成。
  • 入札で競合した他の2社(最終候補の1社、二次辞退の1社)の名称と提示価格(非開示)。
  • Akamaiとの代理店契約にチェンジ・オブ・コントロール条項があるか、契約の承諾手続(公開買付契約上の会社の努力義務の対象)。
  • Oy Gamecluster(クラウドゲーム配信技術)の売上・損益の規模(非開示)。
  • 2026/9末の大株主の状況(半期報告書、11/13提出予定)。
  • TOBの結果、スクイーズアウトの方式・日程、上場廃止日。

14. 出典

※TDnetのURLは約1ヶ月で掲載終了。上記はJPXアーカイブ(www2.jpx.co.jp/disc/)のURL。以後はEDINET・各社IRサイトも参照。

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